Technique(MR2)
05/02/01 update

1.【まず始めに】
2.【MR2の特性】
3.【MR2で速く走るためのドライビングスタイル】
4.【テクニックを向上させるためには】
5.【疑うことから始めよう】
6.【タイヤの効率】
7.【CFの荷重依存性】
8.【ドライビングは詰め将棋

【まず始めに】

 F1やGT選手権などのレースには「レギュレーション」という改造範囲を定めたルールがありますが、ストリートにはそのようなルールはありません。
しかし、ストリートでのチューニングにもある意味「レギュレーション」が存在します。
 それは、「自分の予算の範囲内で”楽しむ”」という事と「自分が死んだり、他人を巻き込んではならない」と言う事です。


MR2に乗ってみたい(買いたい)と思っている方に老婆心ながら御忠告致しておきます。
この車は1台目に乗る車ではありません。初心者の方ならなおさらです。
※もちろんこれは私見ですので、「初心者でもSWでok!!」と言う方も いらっしゃいます。
  最後にどうするか決断するのは、ここをご覧になる方御自身です。

ちょっと厳しいことを書きましたが、かくいう私は自分で購入した1台目の車がMR2でした。
「お前、自分で言っておきながらなんだ!」と思った方もいるとは思いますが、自分の車を買うまでに、友人の車で大学の4年ほど練習をさせてもらいました。
住んでいたところが田舎だと言うこともあり、人気のない駐車場や峠で車の基本的な挙動と走らせ方を覚えました。
その時に乗った車はほとんどがローパワーのFF車でした。
(最後の方にはAE86も流す程度に乗ったことはありますが。)
パワーのある車はえてして車重も重く、限界域の挙動がナーバスでクイックなものです。パワーがある故にそれに頼った走り方の癖がついてしまいます。
今考えれば、最初に乗った車がローパワーのFF車だったということは幸運だったと思います。
FF車は基本的にはアクセルオンでアンダーステアとなり多少アクセルワーク等をミスったとしても即スピンということが無いからです。
(※タックインを起こしたり、タイヤのフリクションサークルの外周を使うような限界域まで攻めることができれば上記は関係なくなりますが。(笑))
また、車重の軽い車はコーナリングスピードが車重の重い車よりも絶対的に高く、ブレーキも厳しくありません。
ロータススーパーセブンや、トミーカイラのZZが良い例です。
現に低速コーナーにおいては、MR2より軽自動車のアルトワークスの方が純粋なコーナリングスピードは確実に上でしょう。
MR2に関しては、これらのFF車とは比較にならないほどリヤがブレイクしたときの挙動がクイックでナーバスです。
レーシングカートほどではありませんが。(笑)
この事から1台目に購入する車には、中古のアルトワークス等のある程度パワーのある軽自動車やスターレット等のFF小排気量車をお勧めします。
それで腕をある程度磨いてからでもこの車に乗るのは遅くありません。
好きな車で事故を起こして命を落としたり、走るのが怖くなったり、嫌になったりして欲しくないからです。欠点もありますが楽しい車なんですから。(笑)


【MR2の特性】

この車で走りを楽しむためにはその特性を理解しておくことが必要不可欠です。
駆動方式はMR(ミッドシップエンジンリアドライブ)です。
この駆動方式のスポーツカーはMR2を除けば、日本車ではMR-S・AZ-1・ビート・NSXぐらいです。
国産の普通車でMR車を買おうとすれば現在の所はNSX・MR-S・MR2しか選択肢はありません。話が横道にそれました。(笑)
MR車は重いエンジンがリヤ寄りにあるためトラクション(駆動力)の掛かりが他の駆動方式の車と比べて抜群に良いのですが、慣性でリヤがいったん流れ出すとなかなか止まらないため限界域の幅が狭くそれを早く感じ取って早め早めの操作を行う事が必要です。
さてMR2の基本的な特性はと言うと、かなりアンダー・オーバーの激しい車といえるでしょう。操れるだけの腕があれば全く問題のないレベルですが、ノーマルのFFやFR車にしか乗ったことのない人にとっては難しい車であることには間違いありません。これは重量配分が完全なミッドシップではなく、RR車に近いということも原因の一つです。(F/R 43:57)
フロントにエンジンが乗っていないために攻め込んだときのフロントの入りは抜群なのですが、交差点で他のFF・FR車と同じスピードでタラーっと走ってもアンダーステア気味になったりします。
またこれは乗り始めた直後だったのですが、交差点でブレーキを残したりせずにタラーっと走っているときにアンダーステア気味になり、FR車と同じ感覚で、「踏んで行けばパワーオーバーが出てアンダーは消えるやろ」とアクセルを踏んだ所、見事スピンしてしまったという恥ずかしい経験もあります。(笑)
その後、民家及び人気のない駐車場に車を持ち込んで徹底的に振り回して、挙動を理解することにつとめました。
 


【MR2で速く走るためのドライビングスタイル】

これは人それぞれに方法論がありますし、 経験を積んで行かないとなかなか見えてこないものではありますが、そう言いきってしまったのでは話はそこで終わってしまいますので「私見」と言うことで読んで下さい。

速く走るためには

  ・コーナリングに見合う分だけコーナーへの進入スピードを上げる。
    ※むやみにコーナーの奥まで突っ込むと言う意味ではありません。
  ・コーナリングスピードを上げる。
  ・ストレートでのスピードを上げるため、その初速を稼ぐ立ち上がり区間で
   で少しでも速くアクセルを全開にする。

と言うことができれば、良いわけです。
しかしながら、矛盾するようですが基本は「スローイン・ファーストアウト」であることはどんな車も変わりありません。

私の方法論でのコーナーの走り方は「タイヤの摩擦円の外周を常に使って走る」ということです。
この状態に持っていくためには、急激な挙動変化を与えてはいけません。

  ・丁寧にブレーキングをする
    (アクセルを離した瞬間にフルブレーキを行ってもタイヤがロックするだけです)
  ・丁寧にステアリングを切る
    (常にタイヤの摩擦円の外周を使っていればそんな操作は出来ません)
  ・丁寧にアクセルを開ける
     (これも上記に同じです。)

この3つが重要でありドライビングの基本です。
常にタイヤの摩擦円(フリクションサークル)の大きさを感じ取り、その外周を越えないよう意識して走ります。フリクションサークルは、フルブレーキ時はフロントタイヤが大きくなり、フル加速時はリアタイヤの方が大きくなるといったようにタイヤへの荷重の掛かり方によってその大きさが変化します。
これは「タイヤの性能を使い切る」為の重要なポイントです。
どんな車であろうとも、そのタイヤの性能以上には走れません。
ここで言う「タイヤの性能」とは何度も言いますが「タイヤの摩擦円の外周を使って走る」状態のことです。
前述の基本的な操作ができた上で、

  ・「コーナー入り口でブレーキを残す」
  ・「アクセルワークを行う」
    ※(イーブンスロットルバランススロットルと言う言葉があります。)

等の応用技が意味を持ってきます。
タイヤは急激な接地性変化を嫌います。
「大きな挙動変化」=「大きな接地性変化」だと言うことができるでしょう。
新品で、頭が平らな消しゴムを押しつけながらどちらかの方向へ押そうとしたとき、どうすれば一番滑りにくいですか?!
消しゴムを垂直に立てて頭の面がべったり机についているときが、一番滑りにくいはずです。横向きに押す力を強めたり、ちょっと傾いただけでも、滑っていなかったものがいきなり滑り出してしまうことでしょう。
タイヤについても同じ事が言えます。
ステアリングの舵角は最小限にとどめるべきです。
ステアリングを切ることは走行抵抗にになります。大きな舵角が残っていてアクセルを開けても走行抵抗が残っていますから車は前に進みにくい状態になっています。
舵角が残っていてアクセルを開ければ、状況によってはアンダーステアが出たりオーバーステアが出たりしますが、ここまでやってしまうのは明らかにドライバーのミスです。

判っていても実際はこれがなかなか。(笑)

これが全部実行できればいいんですけが私はまだまだです。
知らないことも沢山あります。(滝汗)


【テクニックを向上させるためには】

 ドライビングテクニックの向上のためには何を行ったら良いのでしょう?!
自己流では向上できる範囲は限られます。また、一般公道においての練習ではクラッシュの危険も伴うため本当の限界域のコントロールは身に付かない可能性が多分にあります。(中には特別な方もいらっしゃいますが・・・)
そのことは後述することにして・・・

ドライビングにおいて、判断の一番難しいのはコーナーへの進入スピードの判断です。
(進入でのオーバースピード=即クラッシュ)と言う事になりかねないからです。
この感覚を養うための方法としては、下記の方法が有効だと思います。

 1.自分より速い人の助手席に乗せてもらう。
 2.速い人の後ろについて走ってみる。(ついていければですが・・・)

自分より速い人の助手席に乗せてもらい、進入のスピード・コーナリング中の
横Gを体で覚える・慣れるといったことは、上達へのかなりの近道です。
しかしここで注意してもらいたいのは、「アイツがクリアできたんだから自分も出来るはずだ。」と思いこんでいきなり試してみてはダメだと言う事です。
車の仕様やテクニックが自分の車の仕様・テクニックとかけ離れていると、同じ進入スピードで入ったとしても、そのコーナーをクリアできない可能性があるからです。
速い人の横に乗るときは、進入スピードだけでなくステア操作・ブレーキング・アクセルコントロールを総合的に観察して自分に同じ事が出来るのかどうかを必ず判断して下さい。また、そこから少しでもテクニックを盗むようにしましょう!
進入スピードは「ちょっとスローペースかな?!」と思えるくらいの所から徐々にあげていくようにして下さい。
フォーミュラカーのレースウィークのフリー走行等ではオーバースピード気味の進入からスピンするかしないか確かめながらタイムを出しにいったりするシーンを見ることもありますが、あれはサーキットという安全性の高いコースであることと、車を壊しても自分の資金で修理をしなければならないという訳ではないからです。
もちろん、一定のタイムをなるべく短時間で出すという事が最大の目的であり、他のことには目をつぶってしまえる為でもあります。
我々はレーサーではありません。
スピン・クラッシュをすると自分の資金で車を修理をしなければなりません。
またそこがサーキット以外の場所であれば、死の危険も多分にあります。
他人を巻き込んでしまうかもしれません。それはドライバーとして最低のことです。
レーサーではないのですから、自分の能力で出来る範囲・確保できる予算内で「楽しむ」という姿勢を決して忘れないで下さい。


人間の順応性はかなりのもので、一度体験したことがあるのと無いのとではそのスピード領域への到達までの時間がかなり違ってきます。
 同じような理由で、カートに乗ってみたり、ジムカーナをやってみたりサーキットを走ることもかなり有効です。
 もちろん人気のない駐車場などでパイロンを立てて仮想コースを作成してそこを走り、思いついたアイディアを試してみるということも有効でしょう。
 ※しかし、他人に迷惑がかかるような場所では絶対に行わないで下さい。
  ただでさえ車を改造したりスピードを出すような我々のような人間は一般の方々の印象が
  悪いんですから・・・

  せっかく緩和された規制が強化されたり取り締まりが強化されたりして、楽しみが減って
  しまうかもしれませんよ!
  タービン交換した車両や車高調が通常の車検をパスするなんて一昔前では考えられない
  事だったんですから。


 カートについては、遠心クラッチの原付免許程度が必要とされる初心者向けのものでも、スリックタイヤを履いていることもありコーナリング中の横Gはかなりのものです。
これは一般道を自分の車で走っていても体験できないほどのものです。
カートも全日本クラスともなると、コーナリング中の横Gでシートに押さえつけられ肋骨を骨折してしまうこともあるそうです。
 ※全日本クラスの方はほとんどと言っていいほど肋骨の骨折を経験しているそうです。
騙されたと思って一度体験されてみることをお勧めします。
「目から鱗が落ちる」かもしれませんよ?!(笑)


【疑うことから始めよう】

 「テクニックを上達させるためには」と言うことで上に書いてきましたが実際の限界はどこにあるのでしょうか?!
今限界だと思っている所は本当に車の限界なのでしょうか?!
自分のテクニックが限界だというだけでは?!
私も最初は「タイヤが滑っているからこれが限界」と思っていた頃がありました。
 ※最近の事ではありませんが・・・(苦笑)
本当にそうなのでしょうか?! 今タイヤが横に流れてしまうのと同じコーナリングスピードのままでタイヤをグリップさせられないのでしょうか?!
一部の上級者を除いて答えはYESです。
もちろん、ここで「YES」と言った「グリップしている状態」というのは「微妙に流れてはいるがトラクションが抜けておらず進行方向には進んでいる」という状態の事です。
「MR2で速く走るためのドライビングスタイル」の項でもタイヤの特性について少々ふれましたが、コーナリング中にタイヤが流れる原因は、

 1.コーナリングスピードの限界である。
 2.タイヤに「
大きな接地性変化」をさせるような操作をしてしまっている。
 3.コーナリング中にタイヤに掛ける加重が足りない

という事が挙げられます。
タイヤが流れるのは一部の上級者にとっては1.が原因ですが、その他大多数の方にとっては2.が原因です。(かくいう私は2と3が原因でしょう。(苦笑))
2の様な状況を引き起こす原因は「急激なブレーキ・アクセル操作」「急激なステアリング操作」といった「加重移動を意識していない操作」ではないでしょうか?!
この様な「急激な操作」をしているかどうか意識する為には、某漫画のような「
水の入ったコップをドリンクホルダーに置く」といった方法は良い物だと思います。但し、コップだと水をバシャバシャこぼしてしまいますので、最近よくある小さいペットボトル(500ml)に半分くらい水を入れ、その水面の動きを観察してみてはいかがでしょうか 。(ビデオに撮ってみるのが一番いい方法ですが。)
この水面の縁が「減速」「コーナリング」「加速」に伴って「前→横→後」へ綺麗に一定の円を描けば良いわけです。

ここでもう一つの疑問です。
 (※ここでお話しすることは某全日本クラスのドライバーの
   ドライビング理論です。私の言葉でどこまで伝えられる
   かは判りませんが・・・)

「速く走るために、どのようにタイヤを使ったらよいのか?!」と言うことです。
まず、タイヤは横方向のグリップ力よりも縦方向のグリップ力が大きい物です。
言い換えれば、「一定の距離を速く走るためにはなるべく縦方向のグリップ力を使い、直線的に走ればよい」と言うことになります。

ドライビングを「加速」と言う観点から見ると「加速する」「減速する」「加速しない」という3つの状態しかありません。
また「減速」と言うことは「マイナス方向の加速をする」と言うことにも置き換えられます。
ここでちょっと考えてみて下さい。
「100km/hからブレーキングして止まる」のと、「静止状態から加速して100km/hに到達する」のはどちらが短時間で済むでしょう?!
答えはもちろん
ブレーキングして止まる」方が短時間で済みます。
言い換えれば、「加速するのには時間がかかる」という事になります。
一定の距離を短い時間で走りきる為には「プラスの加速」をなるべく長くすれば良い訳ですから、ブレーキングやコーナリングの時間をなるべく短くして加速する時間や距離を長くすれば良いわけです。
ですが、コーナーによって「加速も減速もしない」時間があり、その長さは変化します。
これがいわゆる「立ち上がり重視のコーナリング」「立ち上がり重視のライン取り」というものです。
しかしコーナリングスピードをあまりに抑えてしまっては、立ち上がりでストレートスピードを稼ぐための初速が遅くなってしまいますので、そのさじ加減が難しいところです。

このように、今の自分のドライビングを疑って考える所から始めれば上達の糸口が見えてくるかも知れませんよ?!(笑)
 
※私もまだまだ修行中です。(^-^;

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